「南海トラフ巨大地震で想定される大津波、避難タワーで本当に大丈夫なのだろうか?」
近年の防災意識の高まりとともに、津波避難タワーの設置が進んでいます。しかし、いざという時に頼りになるはずの避難タワーにも、高さに関する不安の声が少なくありません。
この記事では、津波避難タワーの高さを中心に、その安全性について詳しく調べました。
具体的な数値や事例を交えながら、疑問を解消し、避難タワーへの理解を深めていきましょう。
「自分の住む地域の避難タワーは安全なのか?」
「避難タワーの高さはどのように決まっているのか?」
そんな疑問をお持ちの方は、ぜひ読み進めてみてください。
津波避難タワーの高さは十分か?低い心配はないの?

津波避難タワーは、南海トラフ地震などの巨大地震による津波被害を想定し、沿岸部に設置される緊急避難施設です。
その高さや収容能力、設計には地域ごとの津波リスクや地形条件が反映されています。
防災タワーの高さと津波到達リスク
津波避難タワーの高さは地域によって異なり、多くの場合、想定される最大津波高を上回るよう設計されています。
例えば、高知県黒潮町の佐賀地区では、最大津波高18mが想定されており、避難タワーの高さは22mに設定されています。
一方で、黒潮町全体では最大34.4mの津波が想定されており、このような場合にはタワーの高さが不足する可能性も指摘されています。
また、津波避難タワーはあくまで一時的な避難場所であり、「想定外」の津波が発生した場合には最上階に到達するリスクもあります。
そのため、避難後にさらに安全な場所へ移動する「二次避難」が必要になるケースも考慮されています。
収容人数と面積の課題

多くの津波避難タワーは限られた面積と収容人数で設計されています。
例えば、佐賀地区の避難タワーは230人を収容可能ですが、地域全体の住民を収容するには不十分な場合があります。
この問題に対処するため、防災計画では以下のような対策が取られています。
- 複数の避難施設を整備:高台や他の避難ビルと併用することで、収容人数を分散しています。
- 避難訓練の実施:住民が迅速に最寄りの施設へ逃げられるよう、年に一度以上の訓練を行い、防災意識を向上させています。
その他の工夫
津波避難タワーには以下のような設備や工夫が施されています:
- 非常食や水、毛布などの備蓄:孤立時に備えて数日間生存できる物資を用意しています。
- バリアフリー設計:スロープやエレベーターを設置し、高齢者や障がい者にも配慮しています。
- 多用途利用:平常時には歩道橋や防災資料館として活用される施設もあります。
津波避難タワーは沿岸部住民にとって命を守る重要な施設ですが、その効果を最大限発揮するためには、地域ごとの防災計画や住民参加型訓練が不可欠です。
また、「想定外」の事態に備えた柔軟な対応策も求められます。
全国各地の津波避難タワーの例
全国各地の津波避難タワーには、地域特性や想定される津波リスクに応じた設計が施されています。
以下に、津波避難タワーの事例を挙げ、それぞれの特徴を紹介します。
1. 高知県黒潮町佐賀地区 津波避難タワー

- 特徴: 南海トラフ巨大地震による最大津波高34.4mが想定される地域に設置。
- 収容人数: 230人
- 避難スペース: 延べ面積約240㎡
- 設計の工夫: 想定最大津波高を上回る高さに設定されており、地域住民が迅速に避難できるよう計画されています。
2. 静岡県掛川市 菊浜地区・今沢地区 津波避難タワー

- 菊浜地区:
- 高さ: 地表面から10.5m
- 収容人数: 最大600人
- 避難スペース: 16.7m × 12m(約200㎡)
- 今沢地区:
- 高さ: 地表面から15m以上
- 収容人数: 300人
- 特徴: 国内初のプレストレスト・コンクリート(PC)製タワーで、耐久性と施工効率を両立。鉄骨製階段を備え、避難者が迅速に登れる設計。
3. 静岡県吉田町 津波避難タワー

- 特徴: 歩道橋型の構造で、通常時は横断歩道橋として利用可能。
道路の上空を活用して津波避難タワーを整備、全国で初めて。 - 高さ: 海抜3.1mから設置、高さ6.5m
- 収容人数: 約1,200人
- 設計の工夫:
- 地中に約30mの杭を打ち込み、液状化対策を実施。
- 各部材が弾性域内で変形し、壊れない構造。
4. 高知県奈半利町 津波避難タワー

- 1号タワー(東浜地区)
- 高さ: 海抜15m(建物自体は8m)
- 収容人数: 150人
- 特徴: 車椅子対応のスロープ式通路やソーラー式照明灯を完備。
- 2号タワー(生木地区):
- 高さ: 海抜15m(建物自体は10.5m)
- 収容人数: 150人
- 特徴: 保育所や幼稚園近くに設置し、災害弱者への配慮がなされている。
5. 静岡県磐田市 渚の交流館 津波避難タワー

- 特徴: 観光地内に設置され、観光客や従業員向けに設計。
- 収容人数: 約330人
- 避難スペース延べ面積: 約320㎡
- 設計の工夫:
- 周辺には漁港や市場があり、多くの利用者が迅速に避難できるよう配慮。
6. 北海道別海町 野付半島 津波避難タワー

- 特徴: 半島内で最も高い場所に位置。
- 高さ: 床まで6.6m
- 収容人数: 約164人
- 設計の工夫:
- 冬季でも利用可能な設備を整備し、極寒地域特有の課題にも対応。
7. 三重県志摩市 タスカルタワー

- 名称「タスカルタワー」
- 地域住民と観光客双方を対象とした津波避難施設。
- 平常時は展望台としても活用され、防災意識向上にも寄与。
これらの津波避難タワーは、それぞれ地域特性や想定される災害リスクに応じた工夫が施されています。
例えば、高知県黒潮町では世界最大級の津波を想定した施設が整備されており、静岡県吉田町では歩道橋型というユニークな形状で多目的利用を実現しています。
これら施設は住民や観光客の命を守るだけでなく、防災意識向上や地域活性化にも貢献しています。
津波が6mだと家屋の何階まで浸水するのか?
津波の高さが6mの場合、建物の浸水する階数は、建物の1階あたりの階高(階ごとの高さ)や地盤の高さ(海抜)によって異なります。
一般的に、日本の建物では1階あたりの階高は約3mとされているため、津波6mは2階部分まで浸水する可能性があります。
例えば、建物が海抜0mに位置している場合、津波6mはそのまま2階天井付近まで到達します。
一方、建物が海抜2mの場所にある場合、浸水深は4mとなり、1階全体と2階の一部が浸水する計算になります。
逆に、海抜が5mであれば浸水深は1mとなり、1階の床上浸水程度で済む可能性があります。
ただし、津波は単なる静かな水位上昇ではなく、大量の漂流物や強い波圧を伴うため、建物への影響は浸水深だけでは測れません。
木造家屋の場合、浸水深が2~3mでも全壊することが多く、6mの場合にはほぼ流出するリスクがあります。
一方で、鉄筋コンクリート造(RC造)の建物では比較的耐久性が高く、構造を維持できる可能性があります。
このように津波6mでは、多くの場合2階部分まで浸水すると考えられますが、安全確保のためには建物の構造や地盤の高さを事前に確認し、高台や津波避難タワーへの迅速な避難を優先することが重要です。
津波が10mの高さの場合、津波避難タワーは役に立つのか?
津波が10mの高さに達する場合、津波避難タワーが役に立つかどうかは、その設計や設置場所、地域の津波リスクに大きく依存します。
以下に、津波避難タワーの有効性について考察します。
津波避難タワーの高さと役割
津波避難タワーは、想定される最大浸水深に「余裕高」を加えた高さで設計されます。
一般的には、余裕高として2~4mが追加されるため、浸水深が10mの場合、タワーの床面高さは12~14m程度が必要です。
このような設計基準を満たしている場合、10mの津波でも安全な避難場所となる可能性があります。例えば、高知県黒潮町などでは、南海トラフ地震による最大津波高を考慮し、高さ22mの避難タワーが設置されています。
このような施設は、10mの津波に対しても十分な高さを確保しており、一時的な避難場所として機能します。
津波避難タワーのメリット
迅速な避難を可能にする
津波避難タワーは、高台への移動が困難な地域で、一時的な避難場所として重要な役割を果たします。特に、海岸近くや平坦地では、高台まで到達する時間が足りない場合がありますが、近隣にタワーがあれば迅速に安全を確保できます。
構造的な耐久性
鉄筋コンクリート造(RC造)や鉄骨造(S造)で建設されることが多く、漂流物や波圧にも耐える設計が施されています。
例えば、静岡県旭市では、地盤から10m以上の高さを持つタワーが設置されており、安全性を確保しています。
地域全体の防災力向上
津波避難タワーは、防災インフラとして地域住民や観光客の命を守るだけでなく、防災意識を高めるシンボルとしても機能します。
課題と制約
想定外の津波への対応
津波避難タワーは想定された津波高を基準に設計されているため、それを超える規模の津波には対応できない場合があります。
東日本大震災では、「想定外」の津波によって避難施設自体が浸水し、多くの犠牲者が出た事例もあります。
二次避難の困難さ
津波避難タワーは「二度逃げ」(さらに高い場所への移動)が困難です。周囲に高台や安全な場所がない場合、一度浸水すると逃げ場を失うリスクがあります。
収容人数の限界
津波避難タワーは限られた面積しか持たず、多数の住民や観光客を収容するには不十分な場合があります。
例えば、高さ10mで50㎡程度のスペースしかないタワーでは、約100人程度しか収容できません。
津波が10mの場合でも、適切な高さと構造を持つ津波避難タワーは一時的な避難場所として有効です。
ただし、その効果を最大限発揮するためには以下の条件が必要です。
- 想定浸水深より十分高い余裕高を持つ設計(12~14m以上)。
- 周囲に高台や二次避難可能な場所があること。
- 避難訓練や住民への周知徹底。
また、「想定外」の事態にも備え、高台への移動や他の防災インフラとの連携が重要です。
したがって、津波避難タワーは単独で完璧な解決策ではなく、防災計画全体の一部として位置づけられるべきです。
津波避難タワーの利用方法
津波避難タワーは、津波の被害が想定される地域で、緊急時に命を守るための一時的な避難場所として利用されます。
その利用方法は、緊急時の迅速な避難を可能にするために設計されています。
以下に津波避難タワーの具体的な利用方法と注意点をまとめました。
津波避難タワーの利用方法
地震発生後の迅速な行動
- 地震が発生し、津波警報や大津波警報が発表された場合、揺れが収まった直後に速やかに避難を開始します。
- 津波避難タワーは、特に高台への移動が困難な地域で重要な役割を果たします。自宅や職場から最寄りのタワーまでのルートを事前に確認しておくことが重要です。
タワーへのアクセス
- 津波避難タワーは通常時には施錠されている場合がありますが、緊急時には解錠される仕組みが整備されています。
一部のタワーでは、震度5以上の揺れを感知すると自動的にロックが解除されます。
他のタワーでは「破壊可能な窓」を破って内部の鍵を回す仕組みになっています。
避難スペースへの移動
- タワー内部には階段やスロープが設置されており、高齢者や障がい者にも配慮したバリアフリー設計が採用されています。
- 避難スペースは地上から数メートル以上(例: 6~10m)に設置されており、想定される津波高を上回る高さで安全性が確保されています。
避難中の注意点
- 避難スペースでは指定された場所に留まり、安全確認が取れるまで待機します。
- タワー内には非常食や水、簡易トイレ、毛布などの備蓄品が用意されている場合があります。
利用時の注意点
- 事前準備:
津波ハザードマップで自宅や職場から最寄りの津波避難タワーを確認し、避難ルートを家族や同僚と共有しておきましょう。また、避難訓練への参加も有効です。 - 孤立への備え:
津波避難タワーは一時的な避難場所であり、長時間滞在することも想定されます。そのため、水位が下がるまで孤立する可能性を考慮し、非常用持ち出し袋などを準備しておくことが推奨されます。 - 適切な判断:
最寄りの津波避難タワーが海岸線に近い場合など、安全性が確保できない場合は高台への移動を優先するべきです。事前に最適な避難先を選定しておくことが重要です。
津波避難タワーは、高台への移動が困難な地域で命を守るための重要な施設です。
その利用方法としては、地震発生後すぐに速やかにタワーへ向かい、安全な高さまで移動して待機することが基本です。
ただし、事前準備や適切な判断も不可欠であり、日常的にハザードマップや訓練を活用して備えることが求められます。
これらを徹底することで、災害時に最大限命を守る行動につながります。
津波避難タワーの高さは大津波に対して十分かについて、まとめ
この記事では、津波避難タワーの高さが大津波に対して十分かどうか、低いことはないのかという点について解説してきました。
津波避難タワーは、地域によって高さや構造が異なりますが、いずれも想定される津波の高さを考慮して設計されています。建設前に、過去の津波の記録や地形データなどを基に、詳細なシミュレーションが行われ、安全性が確認されています。
しかし、自然災害は予測不能な部分も多く、想定を上回る津波が発生する可能性もゼロではありません。そのため、避難タワーはあくまで「最後の砦」と捉え、日頃からの備えを怠らないことが重要です。
具体的には、ハザードマップで自宅や職場の危険性を確認し、避難経路を把握しておくこと、家族や地域で避難計画を共有しておくこと、防災訓練に積極的に参加することなどが挙げられます。
津波避難タワーは、適切に活用することで、津波から命を守る有効な手段となります。しかし、過信することなく、日頃からの防災意識を高め、いざという時に適切な判断と行動ができるように備えておくことが大切です。
この記事が、津波避難タワーへの理解を深め、防災意識を高める一助となれば幸いです。
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