2025年10月9日、日本の政権はまさに崖っぷちに立たされています。
高市早苗氏の自民党総裁就任をきっかけに、20年以上に及ぶ自公連立の枠組みが崩壊寸前まで来ています。理由は「理念」と「政治とカネ」。
高市総裁の保守的な政治姿勢と、自民党の裏金問題への対応に、公明党と支持母体の創価学会が「もはや看過できない」と総反発。
連立離脱をちらつかせる公明に対し、高市総裁は「連立は基本中の基本」と関係維持に必死ですが、党内調整は難航。公明党は9日の中央幹事会でも結論を出せず、協議は深夜に持ち越される異常事態に。
連立は維持されるのか、それとも崩壊し政局は大混乱に陥るのか。日本の政治の未来を左右する、緊迫の数日間を徹底解説します。
どうなる自公連立? 連立危機の2大要因
今回の亀裂の背景には、大きく分けて二つの深刻な問題があります。
1.高市総裁の「右傾化」への強い懸念
高市総裁の就任は、連立の根幹を揺るがす「理念の対立」を浮き彫りにしました。
彼女が掲げる国家観や政策が、「平和と福祉の党」を掲げる公明党、そして支持母体である創価学会の基本理念と真っ向から対立するため、党内からは「これまでの自民党総裁とは次元が違う」「絶対に相容れない」といった深刻な声が上がっています。
歴史認識・靖国神社参拝:「外交問題にすべきでない」 vs 「断じて容認できない」
この問題は、両党の価値観の違いを最も象徴しています。
高市総裁のスタンス:総裁就任会見(10月6日)で「国のために命を捧げた方に尊崇の念を示すのは当然。どのように慰霊し、平和を祈るかは適宜適切に判断する」と明言。さらに「これは絶対に外交問題にされるべきことではない」と述べ、従来の主張を一切曲げていません。
最新の動き:一方で、今月17日からの秋季例大祭への参拝は、APEC(アジア太平洋経済協力会議)での中韓両首脳との会談を控え、外交関係への配慮から見送る方向で調整に入ったと報じられています。
しかし、これはあくまで「戦術的判断」であり、信念が変わったわけではないため、公明党側の警戒は解けていません。
公明党・創価学会のスタンス:政教分離の観点、またアジア諸国との友好関係を重んじる立場から、首相の靖国参拝には一貫して絶対反対です。
党幹部はすでに高市氏側近に対し、靖国参拝に対する党としての強い懸念を直接伝えており、もし参拝が強行されれば「連立の前提が崩れる」と警告しています。
安全保障:「憲法9条の改正」 vs 「平和主義の堅持」
安全保障政策における隔たりも深刻です。
高市総裁のスタンス: 憲法改正に極めて意欲的で、特に憲法9条2項の「戦力不保持」と「交戦権の否認」の条文を削除することを主張しています。
これは自衛隊を明確に「国防軍」として位置づけるもので、専守防衛からの大きな転換点となり得ます。
公明党のスタンス: 「加憲」、つまり現行憲法に新たな条文を付け加える形での改正には議論の余地を残しつつも、平和主義の根幹である9条の改正には極めて慎重です。
特に「戦力不保持」の条文削除は、党の存立意義を揺るがしかねないため、到底受け入れられるものではありません。
人権・多様性:「伝統的家族観」 vs 「多様性の尊重」
個人の尊厳や多様性に関する考え方の違いも、連立の火種となっています。
高市総裁のスタンス: 選択的夫婦別姓や同性婚の法制化に明確に反対の立場です。2025年10月3日に公表されたLGBT法連合会などのアンケートでも、同性婚の法制化について「更に検討を深める必要がある」と回答するに留めています。
公明党のスタンス: 公明党は選択的夫婦別姓の導入を一貫して主張しており、党内にプロジェクトチームを設置して法案提出を目指しています。
各種世論調査で国民の約7割が賛成している状況も踏まえ、「多様性を尊重する社会の実現に不可欠」として、自民党に強く働きかけてきました。高市総裁の就任は、この流れを完全に逆行させるものだと強い危機感を抱いています。
これらの対立点は、単なる政策論争ではなく、両党が立脚する「国家観」「歴史観」「人権観」そのものの違いです。
そのため、妥協点を見出すのは極めて困難であり、公明党支持者からは「高市総裁のもとで連立を組むことは、党の理念を捨てることに等しい」という厳しい批判が噴出しているのです。
2.自民党「裏金問題」への根深い不信感
自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金問題は、単なる不祥事から、連立政権の存続そのものを揺るがす致命的な亀裂へと発展しています。
この問題で自民党が処分した議員は39人にのぼり、未記載額は安倍派・二階派合わせて総額6億円以上という規模の大きさもさることながら、その後の自民党の対応が公明党の不信感を決定的にしました。
「クリーンな政治」を掲げる公明党にとって、この問題は「支持者への裏切り」に他なりません。斉藤鉄夫代表は高市総裁との党首会談(10月7日)で「わが党の支持者は大変、心を痛めている」と述べ、国民の厳しい視線を直接伝えました。
国民の怒りを代弁する公明党、改革に後ろ向きな自民党
この問題に対する国民の怒りは極めて高く、各種世論調査がそれを裏付けています。
JNN世論調査(5月): 自民党がまとめた政治資金規正法改正案を「評価しない」と答えた人は72%。
政権交代を望む声: 同調査で、次の衆院選で「自公政権の継続」を望む声は34%に留まり、「政権交代」を望む声が48%と上回りました。
公明党は、こうした国民感情を背景に「国民が納得できる抜本的な改革」を自民党に強く要求。しかし、両党の主張には依然として大きな隔たりがあります。
【徹底比較】 埋まらない3つの溝
連立継続の最大の障壁となっているのが、以下の3つの具体的な改革案をめぐる対立です。
対立点 | 公明党の要求(国民目線での抜本改革) | 自民党の案(現状維持に近い及び腰の姿勢) |
① パーティー券公開基準 | 現行の「20万円超」から「5万円超」に引き下げ。 → 誰が政治家に資金提供しているのか透明化を徹底すべき。 | 「10万円超」への引き下げに留める。 →「購入者のプライバシー」「企業活動の自由」などを理由に難色。 |
② 議員の監督責任(連座制) | 秘書(会計責任者)が虚偽記載などで有罪となった場合、議員本人も公民権停止とし、自動的に失職させる厳しい制度を導入すべき。 | 議員本人の「監督責任」を強化するに留める。 → 確認書の提出義務などで対応するも、議員の失職には直結しない「抜け穴」が残る。 |
③ 政策活動費の扱い | 「第二のサイフ」と批判される、使途公開義務のない「政策活動費」は完全に廃止し、使途を全面公開すべき。 | 廃止には応じず、第三者機関によるチェックや10年後に領収書を公開する案を提示。 → 即時の透明化には程遠い。 |
このように、公明党が「国民の信頼を取り戻すには、政治家が身を切る覚悟を示すしかない」と抜本的な改革を迫るのに対し、自民党は党内、特に裏金問題に関与した議員らの強い抵抗を受け、国民感覚からかけ離れた甘い案に終始しています。
公明党幹部からは「これでは全く話にならない。自民党は国民の怒りが分かっていない」「このままでは支持者に顔向けできない」と、もはや怒りを通り越して呆れの声すら漏れています。
この「政治とカネ」の問題で自民党が公明党の要求をほぼゼロ回答で突き返し続けていることが、連立離脱という最終カードをちらつかせる最大の要因となっているのです。
両党の駆け引きとそれぞれの思惑
連立の行方を左右する両党は、それぞれ厳しい表情で交渉に臨んでいます。
公明党:「連立離脱」をカードに最大限の譲歩を迫る
公明党は今、単なる交渉や駆け引きではなく、「政権離脱も辞さない」という最終カードを突きつけ、自民党に最大限の譲歩を迫っています。
10月7日の高市総裁と斉藤鉄夫代表の会談は、物別れに近い形で終了。その後、党執行部会で斉藤代表は「極めて厳しいと言わざるを得ない」と報告し、党内の空気は「連立解消やむなし」との強硬論が支配的になっています。
強気の背景1:支持層からの突き上げるような「怒りの声」
今回の公明党の強硬姿勢は、党幹部の意向だけでなく、その根底にある支持母体・創価学会の会員からの突き上げるような怒りと不満に支えられています。
リアルな支持者の声
- 「なぜ私たちが、自分たちの理念と真逆の高市総裁を誕生させるために、頭を下げて票を集めなければいけないのか」
- 「裏金問題で全く反省しない自民党を、なぜ『クリーンな政治』を掲げる公明党が支え続けるのか。説明がつかない」
- 「次の選挙、自民党候補の名前だけは絶対に書けない」
こうした声は、日々地域で活動する党員や地方議員を通じて執行部に殺到しており、「安易な妥協をすれば、党の存立基盤そのものが崩壊する」という強い危機感が、党全体を覆っています。
強気の背景2:選挙における「核兵器」としての集票力
公明党の最大の武器は、言うまでもなく創価学会の持つ圧倒的な集票力と組織力です。連立を解消し、次の衆院選で選挙協力を行わないことは、自民党にとって「悪夢」以外の何物でもありません。
具体的な数値で見る影響力
1選挙区あたり「2万票」: 公明党(創価学会)は、推薦した自民党候補の選挙区で、およそ1万5千~2万票の上積みが可能とされています。
当落を左右する「生命線」: 首都圏や関西圏などの都市部の選挙区では、自民党候補が野党候補に数千票差で辛勝する接戦区が多数存在します。2021年の衆院選では、5%未満の僅差で勝利した自民党議員は17人にのぼり、彼らにとって公明党の支援はまさに当落を分ける「生命線」です。
「東京3勝26敗」の衝撃シミュレーション: この「生命線」が絶たれた場合の影響は計り知れません。
ある選挙アナリストの試算によれば、公明党の協力が完全に失われた場合、自民党が現在議席を持つ東京の29選挙区(新設区含む)のうち、勝利できるのはわずか3議席にとどまり、残り26議席を失う壊滅的な打撃を受けるとされています。
これは単なる脅しではなく、過去のデータに基づいた極めて現実的なシミュレーションなのです。
この「選挙の互助会」とも言える関係において、現状では明らかに自民党の方が公明党に依存する度合いが高まっています。
公明党は、この非対称なパワーバランスを自覚した上で、10月15日に召集予定の臨時国会での首班指名選挙を事実上の最終期限とし、「理念」と「政治改革」で明確な回答がなければ、高市氏に投票しないという断固たる姿勢で自民党に最後の決断を迫っています。
自民党:連立維持が至上命題、しかし党内調整は難航
高市総裁にとって、連立離脱は政権の死活問題であり、何としても避けなければならない事態です。
総裁選直後から「自公の固い結束こそが、政権安定の基盤だ」と繰り返し公明党に秋波を送り続けていますが、党内は一枚岩とは言えず、まさに「前門の虎、後門の狼」の状態で身動きが取れなくなっています。
ジレンマ①:「岩盤保守層」への配慮という名の〝呪縛〟
高市総裁の最大のジレンマは、自身の権力基盤である党内保守派の存在です。
保守派の反発: 総裁選で高市氏を勝利に導いたのは、安倍元首相の理念を引き継ぐ保守派議員や、「岩盤保守層」と呼ばれる党員たちです。
彼らは、高市総裁の歴史認識や安全保障観、伝統的な家族観を熱烈に支持しており、公明党に譲歩することを「理念の放棄」「弱腰外交」と捉え、絶対に容認しません。
具体的な圧力: すでに一部の保守系議員からは「公明党の顔色をうかがう必要はない」「ここで妥協すれば、何のために高市さんを総裁にしたのか分からない」といった公然たる牽制の声が上がっています。
高市総裁が公明党の要求(特に政治改革や歴史認識)を丸呑みすれば、自身の足元から支持が崩れ、党内での求心力を一気に失う危険があります。
ジレンマ②:代替案としての「国民民主党」との連携、その現実味は?
公明党との決裂に備え、水面下では新たなパートナー探しが活発化しています。その最有力候補が国民民主党です。
キーマンは麻生最高顧問: 高市総裁の後ろ盾である麻生太郎最高顧問が主導し、国民民主党の玉木雄一郎代表側と接触を重ねています。
両党は憲法改正論議に前向きである点や、安全保障政策の一部では親和性があると見られています。
しかし、越えがたい「政策の壁」と「数の問題」: 連立のハードルは極めて高いのが実情です。
政策分野 | 国民民主党の主張 | 自民党(高市氏)の主張 |
経済政策 | 労働組合が支持母体。「給料が上がる経済」を最優先し、ガソリン税減税(トリガー条項凍結解除)を強く要求。 | 財政規律を重視する傾向が強く、減税には慎重。積極財政を掲げるも、具体的な政策では隔たりが大きい。 |
エネルギー | 「脱原発」を基本方針とし、再生可能エネルギーへの転換を主張。 | 原発の再稼働や次世代革新炉の開発に積極的。エネルギー政策の方向性は真逆。 |
最新の動き こうした八方塞がりの状況の中、高市総裁と公明党の斉藤代表は明日10月10日に再度、党首会談を行うことで合意しました。
ここで高市総裁が、自身の支持基盤の反発を覚悟の上で、公明党が納得するレベルの譲歩案(特に政治改革)を示せるかどうかが、連立の行方を占う最後の分水嶺となりそうです。
今後の焦点と見通し:3つのシナリオとタイムリミット
【最新動向】 10月9日、公明党は中央幹事会を開きましたが、連立離脱をめぐり賛否両論が噴出し、結論は出ませんでした。
「高市総裁とは相容れない」とする離脱派と、「政権を支える責任がある」とする継続派が激しく対立し、斉藤鉄夫代表への対応一任は見送られ、夜に再度協議するという異例の事態となっています。これは、党が分裂しかねないほどの深刻な状況に陥っていることを示しています。
運命の日は、明日10月10日に予定される最後の自公党首会談、そして10月15日の臨時国会における首班指名選挙です。高市総裁の最終判断によって、今後の政局は以下の3つのシナリオのいずれかに突き進むことになります。
シナリオ1:苦渋の譲歩による「亀裂だらけの連立継続」
起こること: 高市総裁が「政権維持」を最優先し、自身の支持基盤である保守層の反発を覚悟の上で、公明党の要求を大幅に受け入れる(特に政治資金規正法改正で「パーティー券公開基準5万円」「連座制導入」などを呑む)ことで、首班指名直前にギリギリで連立合意に至る。
その後の展開
不安定な政権運営: 連立は維持されても、両党の信頼関係は完全に崩壊。「同床異夢」どころか「同床異夢(いむ)」状態となり、重要法案の審議のたびに公明党が反旗を翻す可能性が残ります。高市総裁が掲げる憲法改正などの看板政策は事実上不可能になります。
短命政権のリスク: 1990年代の細川護熙内閣(8党派連立)のように、内部の路線対立からわずか8ヶ月で瓦解した例もあり、高市政権も常に内部分裂のリスクを抱え、短命に終わる可能性が高まります。
可能性: 中。自民党内の抵抗は強いものの、野党への転落という最悪の事態を避けるための現実的な選択肢。
シナリオ2:交渉決裂による「連立解消と政界大混乱」
起こること: 高市総裁が保守層への配慮を優先し、公明党に譲歩しないまま交渉が決裂。公明党が正式に連立離脱を表明し、10月15日の首班指名選挙で高市氏に投票しない。
その後の展開
首班指名選挙の行方(衆議院の勢力図)
- 衆議院定数:465議席 / 過半数:233議席
- 自民党:191議席
- 公明党:24議席
- 立憲民主党:148議席 公明党(24議席)が反対に回れば、自民党単独では過半数に42議席も足りず、高市氏は首相に指名されません。1回目の投票で過半数を獲る候補がいない場合、上位2名による決選投票となりますが、野党が候補を一本化し公明党がそれに乗れば、野党党首が首相になる可能性すらゼロではありません。
解散総選挙へ: このような大混乱を収拾するため、高市政権は発足もできずに衆議院の解散・総選挙になだれ込む以外に道はなくなります。その場合、自公の選挙協力は完全に消滅し、両党ともに多数の議席を失う共倒れが現実味を帯びます。
可能性: 高。現在の両党の溝の深さ、特に公明党支持層の怒りを考えると、最も現実的なシナリオになりつつあります。
シナリオ3:連立解消後の「閣外協力」という茨の道
起こること: 連立は解消するものの、公明党は野党と組むこともせず、是々非々の立場で個別の政策ごとに自民党と協力する「閣外協力」の形をとる。
その後の展開
極度の政権不安定化: 自民党は過半数を持たない少数与党となり、予算案や重要法案を通すたびに公明党や他の野党の協力を仰ぐ必要が出てきます。法案一本ごとに厳しい交渉を強いられ、国会は常に緊張状態となり、政治は停滞します。
過去の失敗事例: 1994年の羽田孜内閣は、社会党が連立を離脱し閣外協力に転じた直後に、予算審議の見通しが立たなくなり、わずか64日で総辞職に追い込まれました。「閣外協力」は事実上の延命措置に過ぎず、最終的にはシナリオ2の解散総選挙に行き着く可能性が極めて高い選択肢です。
可能性: 低。両党にとってメリットがほとんどなく、政治の停滞を招くだけの延命策に過ぎないため。
日本の政治は今、政権の枠組みそのものが変わるかどうかの歴史的な岐路に立たされています。高市総裁と自民党に残された時間は、あまりにも短いのが現状です。
まとめ:どうなる自公連立 離脱か?継続か?【高市政権VS公明党】
この記事では、高市早苗総裁の誕生で岐路に立つ自公連立政権の現状を徹底解説しました。
高市氏の保守的な「理念」と、自民党が抱える「政治とカネ」の問題。
この二大要因に公明党と支持母体が「もはや容認できない」と反旗を翻し、連立は崩壊寸前です。
記事で示した通り、明日10日の党首会談で自民党が抜本的な譲歩案を示せなければ、連立解消と政局の大混乱は避けられません。
亀裂だらけのまま連立を継続するのか、それとも決裂し解散総選挙になだれ込むのか。
日本の政治の未来を左右する、まさに歴史の分岐点となる数日間の動きを理解するための一助となれば幸いです。