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80歳国勢調査員の死亡事故|国勢調査員の仕事は危険なのか?現状と対策

80歳国勢調査員の死亡事故 くらし

80歳の国勢調査員が、調査活動の初日に訪問先のマンションで倒れ、亡くなるという痛ましい事故がありました。

このニュースに、「国勢調査員の仕事はそんなに大変なのか」「なぜ高齢者が?」「危険な仕事なのではないか」と疑問や不安を感じた方も多いのではないでしょうか。

2025年10月、5年に一度の国勢調査が全国で一斉に実施されます。

これは、日本の未来を描くための重要な統計調査です。しかし、その最前線で活動する調査員が、過酷な状況に置かれている事実はあまり知られていません。

この記事では、2020年の国勢調査期間中に兵庫県姫路市で起きた、80歳の調査員が訪問活動中に死亡した痛ましい事故をきっかけに、国勢調査員という仕事の実態、直面するリスク、そして国が進める安全対策やオンライン化の現状について、今日的な視点から深く掘り下げて解説します。

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80歳国勢調査員の死亡事故

出典:ウィキペディア 兵庫県姫路市の飾磨警察署

【事故の概要】国勢調査初日に起きた悲劇

2020年9月20日、国勢調査の開始初日のことでした。

兵庫県姫路市で、調査員として活動していた80歳の男性が、調査票を配布するために訪れたマンションの通路で意識を失って倒れているのが見つかりました。男性は病院に搬送されましたが、その後、死亡が確認されました。

男性は国勢調査の初日の業務にあたっており、妻と一緒に手分けをして各戸を訪問している最中でした。倒れる直前に訪問を受けた住人によれば、その際の男性の様子に特に異常は見られなかったということです。

男性は頭部に出血を伴うけがをしていましたが、これは転倒した際に負ったものと見られています。家族によると男性は以前から心臓に持病があったといい、警察と消防は、業務中に体調を崩して倒れた可能性が高いとみて詳しい状況を調べています。

ご家族によると男性は心臓に持病を抱えていたとのことですが、訪問先で特別なトラブルがあったわけではありませんでした。

この事故は、業務中の第三者による危害ではなく、本人の健康状態に起因する悲劇であったと考えられます。

しかし、国勢調査員の仕事には、このような身体的負担以外にも様々なリスクが潜んでいます。

この出来事は、国勢調査という一大事業が、調査員の善意や責任感、特に高齢の担い手によって支えられているという現実を浮き彫りにしました。

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国勢調査員の仕事は危険なのか?現状と対策

国勢調査員の仕事に潜む危険性

国勢調査員の仕事は、一見すると安全に思えるかもしれませんが、いくつかの危険性や困難が伴います。

身体的・精神的負担: 調査員は多くの世帯を徒歩で訪問するため、特に高齢の調査員にとっては身体的な負担が大きくなります。また、調査への非協力的な世帯への対応は、精神的な苦痛を伴うことがあります。

訪問時のリスク:

  • 夜間の訪問: 都市部では、夜間に個人宅を訪問することに危険を感じる調査員が少なくありません。
  • 見知らぬ人との接触: 全ての世帯を訪問するため、見知らぬ人の家を一人で訪れることには、本質的なリスクが伴います。
  • 過去の殺害事件: 1990年には、広島市で国勢調査員として活動していた36歳の主婦が、訪問先の住民に殺害されるという痛ましい事件が発生しました。これは国勢調査が始まって以来、調査員が殺害された初めての事件であり、これを機に安全対策が強化されました。
  • 「かたり調査」詐欺の存在: 国勢調査員を装って個人情報を聞き出そうとする「かたり調査」と呼ばれる詐欺行為が存在します。これにより、正規の調査員が住民から不審な目で見られたり、トラブルに巻き込まれたりする可能性があります。

安全対策

国勢調査員は、非常勤の国家公務員として任命され、いくつかの安全対策が講じられています。

  • 身分証明: 調査員は顔写真付きの「調査員証」と腕章を必ず携帯しています。住民は、不審に思った場合、市町村に問い合わせて身元を確認することができます。
  • 任命基準: 調査員は、暴力団員などの反社会的勢力に該当しないことなどが任命の条件となっています。
  • 補償制度: 調査活動中に急激かつ偶然な外来の事故によって負傷した場合の補償制度も設けられています。

結論として、国勢調査員の仕事が日常的に生命の危険に晒されるような職務ではありませんが、身体的・精神的な負担や、見知らぬ個人宅を訪問することに伴う潜在的なリスクは存在します。

姫路市での死亡事故は持病によるものとみられていますが、この仕事が持つ多面的な課題を浮き彫りにした事例と言えるでしょう。

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なぜ?国勢調査員に高齢者が多い2つの理由

国勢調査員は、市区町村からの推薦などに基づき、総務大臣によって任命される「非常勤の国家公務員」です。

任期は約2ヶ月間で、地域社会への貢献意識が高い方が多く活動しています。その中でも、特に高齢者の割合が高い背景には、主に2つの理由があります。

地域に精通した人材が求められるため

調査を円滑に進めるには、担当する調査区の地理や居住状況を把握していることが非常に重要です。

そのため、長年その地域に住み、事情に詳しい退職後のシニア世代は、適任者として期待される傾向にあります。

まとまった時間を確保できる人材が中心になるため

調査期間中、調査員は説明会への参加、調査書類の準備、各世帯への訪問・説明、調査票の回収・点検といった多岐にわたる業務をこなす必要があります。

日中の活動も多く、他の仕事との両立が難しいため、比較的時間に融通が利くリタイア世代や主婦(主夫)が主な担い手となっているのが実情です。

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国勢調査員の仕事は「きつい」「危険」?直面する3つのリスク

社会貢献の意識だけでは乗り越えられない、身体的・精神的な負担が調査員にはのしかかります。

リスク1:身体的な負担

担当する調査区の数十世帯から百数十世帯を、徒歩や自転車で一軒一軒訪問します。

集合住宅の階段の上り下りや、天候の悪い日の活動は、特に高齢の調査員にとって大きな身体的負担となります。

今回の死亡事故のように、持病が悪化する引き金になる可能性も否定できません。

リスク2:精神的なストレスとトラブル

近年、プライバシー意識の高まりや特殊詐詐などへの警戒心から、調査員が厳しい対応を受けるケースが増えています。

「なぜ個人情報を教えなければいけないのか」といった詰問や、一方的なクレーム、インターホン越しに門前払いされることも少なくありません。

こうした精神的なストレスは、調査員の大きな悩みとなっています。

リスク3:身の危険と安全性の問題

オートロックマンションの普及により、玄関先にたどり着くことすら困難なケースが増加しています。

また、不審者と間違えられたり、ペットに吠えられたりといった予期せぬトラブルに遭遇する危険性もあります。

国は調査員に対し身分証明書や腕章、バッグなどを支給していますが、個人の安全を完全に担保するのは難しいのが現状です。

調査員の安全は守られる?国の対策と「公務災害」の適用

国や自治体も、調査員の安全確保のために様々な対策を講じています。

安全確保のための備品: 顔写真付きの「調査員証」や腕章、公式のバッグを必ず携行し、身分を明示するよう指導しています。

複数人での活動推奨: 不安な場合や夜間の訪問など、2人1組での活動を推奨しています。

危険を感じた際の対応: 危険や不安を感じた場合は無理をせず、市区町村の担当課へ速やかに連絡・相談する体制が整えられています。

公務災害補償: 調査活動中に万が一、事故にあったり怪我をしたりした場合は、国家公務員災害補償法が適用され、治療費などの補償を受けることができます。

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【2025年国勢調査】どうなる?オンライン回答の拡大と訪問調査

調査員の負担軽減の切り札として、国が最も力を入れているのが「インターネット(オンライン)回答」の推進です。

2020年の前回調査では、オンライン回答率の目標を50%としていましたが、最終的な回答率は全国平均で53.1%(世帯単位)となり、初めて紙の調査票を上回りました。

2025年の次期国勢調査では、この流れをさらに加速させ、より多くの世帯にオンラインでの回答を促す方針です。

オンライン回答が普及すれば、調査員が各世帯を訪問する回数を大幅に減らすことができ、身体的な負担やトラブルのリスクを軽減できます。

しかし、高齢者世帯など、デジタル機器の操作に不慣れな層へのサポートは依然として不可欠です。

全ての世帯がオンラインで回答できるようになるまでは、調査員による訪問調査の重要性は変わりません。

今後は、オンライン回答を基本としつつ、必要な世帯へは手厚い人的サポートを行うという、ハイブリッドな調査方法がより一層重要になるでしょう。

まとめ:80歳国勢調査員の死亡事故|国勢調査員の仕事は危険なのか?

姫路市で起きた調査員の死亡事故は、個人の善意だけでは支えきれない国勢調査の過酷な実態を私たちに突きつけました。調査員の多くは、私たちの隣人であり、地域のために汗を流す高齢者の方々です。

2025年の国勢調査を成功させるためには、私たち国民一人ひとりが調査の重要性を理解し、調査員への協力を惜しまないことが不可欠です。

そして同時に、国や自治体は、最前線で活動する調査員の安全を確保し、負担を軽減するためのオンライン化推進とサポート体制の強化を、これまで以上に真剣に進めていく必要があります。

安全な調査環境の確保は、正確な統計を得るための大前提と言えるでしょう。

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