当初、圧倒的な議員票を背景に小泉進次郎農水相(44)の優位が伝えられていた自民党総裁選。
しかし、終盤に差し掛かり情勢は一変。
最新の党員・党友を対象とした調査では、高市早苗前経済安全保障相(64)が支持率でトップに躍り出るなど、レースは一気に混戦模様を呈しています。
「手堅さ」が裏目に出た小泉氏と、メッセージが党員に響いた高市氏。
いったい何が起きているのでしょうか。
この記事では、総裁選の最新情勢を分析し、各候補の強みと懸念材料、そして誰が新総裁になっても直面する「人事」「連立」「解散総選挙」という3つの大きな課題について、専門家の見解も交えながら分かりやすく解説します。
自民党総裁選、情勢急変?小泉氏「失速」報道、高市氏が党員支持で猛追

小泉進次郎氏—「手堅い戦い」が裏目?失速の背景
総裁選序盤、小泉氏は党内の幅広い支持を固め、優位に戦いを進めていると見られていました。
強み:重鎮の支持と政治改革での実績
菅義偉前首相(76)や麻生太郎最高顧問(85)といった党内重鎮からの評価が高いことが、小泉氏の最大の強みです。
特に麻生氏は、小泉氏が党政治改革本部事務局長として、企業・団体献金問題で「禁止よりも公開」を掲げ、野党の矢面に立って議論をリードした姿勢を「小泉は成長した」と高く評価しているとされます。
盤石な議員票を背景に、「小泉新総裁」誕生は確実との見方が大勢を占めていました。
懸念材料1:過去の「珍回答」と討論会への不安
しかし、小泉氏には懸念材料もあります。
その一つが、過去の総裁選で見られた討論会でのパフォーマンスです。
前回、カナダで開かれるG7サミットについて問われた際、「私は今、43歳です。総理就任同い年のトルドー首相と共に、G7の連係がさらに深まる、そんなサミットにしていくことをお約束します」といった趣旨の発言が「珍回答」と揶揄され、失速の一因となりました。
今回も、選挙戦の最終盤にフィリピンでのASEAN農林大臣会合に出席する予定が組まれており、「討論会への出席を極力避ける狙いがあるのでは」との憶測を呼んでいます。
懸念材料2:「らしさ」の喪失と党員票の伸び悩み
さらに深刻なのが、「らしさ」が失われたことへの失望感です。
最新の報道(日本テレビ系・9月26日)によると、党員・党友調査で高市氏に逆転を許した背景には、小泉氏の戦い方があるといいます。
今回は「党内融和」を最優先に掲げ、意見が割れるテーマでは持論を封印。
この「手堅い」戦略が、かつての持ち味であった「改革姿勢」を期待していた党員層の離反を招き、「面白みに欠ける」「誰のための政治か見えない」といったマイナス評価につながっていると分析されています。
高市早苗氏—党員に響く「ブレない姿勢」と意外な応援団
一方、劣勢が伝えられていた高市氏は、ここにきて急速に支持を拡大しています。
猛追の背景:党員・党友の心を掴んだメッセージ
最新の調査で党員支持トップに立った高市氏。
その原動力は、出馬会見から一貫して訴え続ける「ブレない姿勢」と明確な政策メッセージです。
「責任ある積極財政で日本経済を成長させる」「防衛力を抜本的に強化し、国民の命と暮らしを守る」といった主張が、保守層を中心とする党員の心に強く響いていると見られています。
陣営からは「高市氏のメッセージがようやく伝わった。数字以上に勢いを感じる」と手応えを語る声が上がっています。
思わぬ”応援団”の登場
高市氏の戦いには、思わぬ応援団も駆けつけています。
ミュージシャンの世良公則氏(69)もその一人。
世良氏は「近隣国との問題や食料の自給率の問題などについて、高市さんはご自分の考えを持っていらっしゃる。役人の言葉じゃない言葉でお話しになっておられる」と高く評価し、エールを送っています。
陣営の課題:脇の甘さも露呈
しかし、盤石とは言えません。
出馬会見では、司会を務めた黄川田仁志衆院議員が記者を容姿で表現して指名し、高市氏が即座に謝罪する一幕も。
こうした脇の甘さが、今後の戦いにどう影響するかも注視されています。
総裁選後、日本の政治はどう動く?3つの焦点
今回の総裁選は、誰が新総裁に選ばれるかで日本の政治が大きく動く可能性があります。特に重要な3つの焦点を見ていきましょう。
焦点1:新政権の顔ぶれは?(人事)
新総裁が最初に取り組むのが、党役員人事と組閣です。
小泉氏が勝利した場合、選対本部長を務めた加藤勝信財務相(69)が幹事長、齋藤健前経産相(66)が官房長官、木原誠二選挙対策委員長(55)も党三役入りが有力視されています。
いずれにせよ、「党内融和」が最大のテーマとなり、他の候補者も要職で起用される見込みです。
最大の焦点は、高市氏の処遇。昨年、石破政権に対して「幹事長以外は受けない」と入閣を固辞した経緯があり、今回もその姿勢を貫けば、新政権は発足当初から不協和音を抱えることになります。
焦点2:少数与党からの脱却は?(連立政権)
現在の自民・公明連立政権は、衆参両院で過半数を割り込む「少数与党」の状態にあり、国会運営は極めて不安定です。
この状況を打開するため、新総裁は野党との連立交渉を本格化させる可能性があります。
最有力パートナーと目されるのが、日本維新の会です。
維新の馬場伸幸前代表(60)は周囲に「年が明ける頃には与党だろう」と語るなど、連立に前のめりな姿勢を見せています。
ただし、維新側は連立入りの見返りとして、看板政策である「大阪副首都構想」の推進や、馬場氏らの入閣などを要求すると見られており、交渉は一筋縄ではいかないでしょう。
焦点3:解散総選挙はいつ?
新総裁にとって最大の権限が「衆議院の解散権」です。
「ご祝儀相場」で内閣支持率が高いうちに解散に踏み切り、少数与党の状態を解消したいと考えるのが自然です。
政治ジャーナリストの青山和弘氏は「秋の臨時国会で補正予算などを成立させた後、支持率を見極めて判断するはず。早ければ11月、年内解散の可能性も十分にある」と指摘します。
テレビ各局もすでに「新総裁誕生」を前提とした解散総選挙特番の準備を進めているとされます。
一方で、元自民党本部事務局長の久米晃氏は「裏付けのない人気だけで解散しても、国民が自民党に票を投じるとは思えない」と手厳しい見方を示しており、まずは経済対策などでじっくりと実績を積むべきだとの慎重論も根強くあります。
まとめ:自民党総裁選、情勢急変?小泉氏「失速」、高市氏が党員支持で猛追
当初の「小泉氏優位」という見方は大きく揺らぎ、党員調査の結果を受けて高市氏が猛追。このまま決選投票にもつれ込む可能性が現実味を帯びてきました。
小泉氏は「らしさ」を取り戻し、党員の支持を再結集できるのか。
高市氏はこの勢いを維持し、国会議員票を切り崩せるのか。
誰が新総裁に選ばれても、その先には党内人事、連立交渉、そして解散総選挙のタイミングという、極めて難しい政治判断が待ち構えています。
今回の総裁選は、自民党の未来だけでなく、今後の日本の政治全体の方向性を決める重要な選挙です。最終盤の動きから目が離せません。
参考リンク
自由民主党:総裁選2025:https://www.jimin.jp/sousai25/
首相官邸公式サイト:https://www.kantei.go.jp/
NHK:自民党総裁選 特設サイト:https://www.nhk.or.jp/politics/word/自民党総裁選/